チューナーはメゾンになった。BRABUSのベントレー進出と“ドロップ化”するラグジュアリーカー

· BLACKBASE編集部 · コラム・考察
チューナーはメゾンになった。BRABUSのベントレー進出と“ドロップ化”するラグジュアリーカー

Image by: BRABUS

2026年のラグジュアリーカー業界で起きていることを一言でまとめるなら、「クルマの売り方がファッションの文法に寄った」だ。象徴的な出来事が二つある。メルセデス専門だったBRABUSがベントレーのコンプリートカーを発表したこと。そしてそのベントレーが、マリナーの限定車を“シーズナルリリース”として毎年ドロップすると宣言したことだ。

チューナー側の変化:改造屋からメゾンへ

BRABUSはもはや「速くする会社」ではない。艶消し黒とカーボンと赤ステッチの世界観をあらゆる高級車に適用する、様式のブランドである。MANSORYも同じで、フルカーボンの黒い装いこそが商品であり、ベース車は素材に過ぎない。顧客はスペックではなく「その家の仕立て」を買う。これは服の世界でいうメゾンのオートクチュールと完全に同じ構造だ。

メーカー側の変化:カタログからコレクションへ

迎え撃つメーカー側も、ロールス・ロイスはブラックバッジという“公式カスタム”を早くから確立し、ベントレーは限定100台の番号入りコレクションを季節ごとに落とすようになった。年次改良のカタログモデルを売る商売から、「今季逃したら二度と買えない」を売る商売へ。希少性の編集がメーカーの本業になりつつある。

買い手に起きること

この構造変化の帰結として、クルマ選びは「どの型式に乗るか」から「どの美学に与(くみ)するか」へ変わっていく。それはまさに服の選び方であり、クルマがワードローブの一部になるということだ。本誌が服の雑誌の姉妹誌としてクルマを扱う理由も、そこにある。

編集部の視点

面白いのは、各メゾンの様式が驚くほど明確に「顔」を持っていることだ。カーボンと赤ステッチで武装するBRABUS、外装のほぼ全面をカーボン地に置き換えるMANSORY、クロームを沈めて出力を上げるロールス・ロイスのブラックバッジ。同じ「強く、暗く、速く」でも、たどり着く手つきがまったく違う。

型式ではなく美学を選ぶ——その選び方が成立するだけの選択肢が、いま市場に揃っている。本誌がブランド辞典を資産として作り込んでいる理由も、そこにある。

※掲載内容は公開時点の情報です。価格・発売日・仕様等の最新情報は、出典元および各メーカー・インポーターの公式発表をご確認ください。

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